
腹腔鏡下手術は、(1)子宮筋腫、(2)卵巣嚢腫、(3)子宮外妊娠、(4)卵管不妊など、良性疾患が適応となります。当院では、これら良性疾患の95%以上を腹腔鏡下手術によって治療しています。当院で行っている腹腔鏡下手術の概要を紹介します。手術をお受けになる場合、以下の点を十分ご理解頂きますようお願い申し上げます。なお不明な点がございましたらお尋ね下さい。
I. 腹腔鏡下手術の利点、欠点
腹腔鏡下手術は、臍窩下方に約0.5-10mmの切開を加え、そこから腹腔鏡を挿入、腹腔内を観察しながら下腹部に開けた小さい穴(5〜10mm,3〜4個)から鉗子を用いて手術を行います。腹腔鏡下手術は、手術侵襲が少ないことから
・手術の傷が小さく術後の疼痛が少ない
・術後の癒着などの合併症が少ない
・入院期間が短く早期社会復帰が可能
など多くの利点があります。しかし腹腔鏡下手術には限界もあることから子宮筋腫や卵巣腫瘍などの場合、摘出組織を腹腔内より取り出すために小開腹(2-5cm)を行う場合もあります。また下記のIIIのような理由によっては、通常の開腹よる手術になる場合もあります。
II. 入院期間の目安は?
- 子宮筋腫(子宮摘出術、筋腫核出術) 5-7日間
- 卵巣嚢腫(卵巣摘出術、嚢腫摘出術) 3-5日間
- 卵管不妊(卵管形成術、癒着剥離術) 3-5日間
- 子宮外妊娠(根治術、卵管切開術) 3-5日間
* 退院後2〜4日間は、自宅安静、入浴禁(シャワー可)となります。
*抜糸が必要な場合は、退院後に外来で行います。
III. 以下のような場合には、腹腔鏡下手術を中止し、通常の開腹術によって手術を行う場合があります
- 癒着が非常に強く、腹腔鏡下手術が不可能な場合
- 悪性疾患が疑われ、腹腔鏡下手術では、目的の手術が不可能な場合
- 開腹術によって手術を行った方が良い結果が得られると判断した場合
- 偶発合併症(術中術後出血、腸管損傷、尿管損傷など)が発生した場合
* 摘出組織を取り出すために小開腹を行う場合もありますが、退院に影響ありません。
IV. 痲酔方法は?
腹腔鏡下手術の痲酔は、原則として全身麻酔です。
V. 偶発合併症の種類と頻度は?
腹腔下手術の偶発合併症には、血管損傷、腸管損傷、腹壁ヘルニアなどがあります。このような場合には、術中または術後に開腹して治療する場合もあります。国内(112施設)で報告されている腹腔鏡の偶発合併症は234例(血管損傷97例、腸管損傷58例、他79例)で、その約40%が開腹術によって治療しております。また改めて開腹術が必要となった症例は、39例(出血20例、腹膜炎6例、腸閉塞 7例、他6例)となっております。(参考文献;角田他、日産婦内視鏡学会誌10巻p125.1994)
VI. 輸血について
輸血は予定しておりません。ただし強度な癒着や困難な手術などによって出血が多い場合には、術中や術後に輸血が必要になる場合があります。
(10%,1%,0.5%,0.2%,0.1%の確率、日赤の血液を使用します)
*副作用 輸血後肝炎(1/100万)、輸血後HIV(1/1000万以下)、アレルギー、じんましん、発熱(1/20〜1/100、重症1/10000)、移植片対宿主病(GVHD)1/10000以下 (当院では予防のため血液に放射線を照射した血液を使用しております)
VII. 止血剤の使用に関して
手術中に止血困難な頑固な出血を認めた場合、止血剤である「タココンブ」(厚生労働省、平成10年3月承認)を使用することがあります。「タココンブ」には、牛由来の成分とヒトの血液成分が含まれており、ウイルス感染(肝炎、エイズ、パルボ、狂牛病など)の危険性が考えられます。しかし平成14年3月現在、既に70万枚(外国54万枚、日本約19万枚)使用されていますが、今までにウイルス感染が問題になり製品の回収となった事例はありません。
「タココンブ」:感染リスクを回避するために様々な安全対策がとられております。まず牛は、狂牛病の発生していない国(ニュージーランド、ウルグアイ)の牛を使用し、牛の成分は、感染リスクに該当しない安全性の高い部分を使用しています。また万一に備え狂牛病の感染を回避するために原因物質の除去処理やヒトの血液では、肝炎ウイルスとエイズウイルスの抗原・抗体検査で全て陰性が確認されており、また加熱処理によってさまざまなウイルスの死滅処理を行っております。また不活化・除去が困難であるパルボウイルスに対しては遺伝子増幅検査を実施し高濃度混入がないことが確認されております(製品情報より抜粋)。
パルボウイルスは、頬が赤くなる「リンゴ病」の原因ウイルスで幼児期によく見られ、成人では約5〜7割の方が自然感染して抗体を持っています。パルボウイルスに感染すると発熱、発疹などがみられますが、成人の場合、ほとんどのヒトが無症状に経過します。
VIII. 術後の体位変換(癒着防止に最も効果的な方法です)
*帰室後約2時間〜次の日の朝まで:約90度(真横を向く程度)、左右に約60分毎に
*次の日の朝から約3〜4日間:約130-150度(腹ばいに近い程度)左右に約-60分毎に(座位は出来る限り避ける)






